たとえ話

 その町は不思議なところだった。
 比較的新しいわりに住民の独り言すら世界的注目を集めるのだ。

 町には奇妙な外観の工場がいくつもあった。
 町が形を整えるころからの住民は、この工場が町の不思議の種だということを知っていた。
 不思議な町はどんどん人を集め、町は大きな都市になりつつあった。

 あるとき住民が運動を始めた。
 「工場が町の美観を損ねている。迷惑だ。廃業しろ。」というのだ。

 古くから住んでいた人達は、たいして気にとめなかった。
 それまでも何度も同じことをいう人はいたし、立法行政府は外圧に屈することはあっても概ね妥当な運営を続けてきたのだから。

 転機は突然やって来たように見えた。
 工場が閉鎖されたのだ。
 廃業を主張していた人達は喜んだが、大半の人には関係がないことだった。

 関係がないはずだった。